「念力ろまん」

笹公人 第四歌集
定価:2,268円(税込)
刊行:2015/05/29
発売:書肆侃侃房
ISBN:978-4863851832

装画・矢吹申彦
装丁・毛利一枝
帯文:大林宣彦

 

 

『念力ろまん』15首選

夏の夜の団地の部屋のカーテンに海を想えば海は見えくる
高校生カップルの削るロングパフェに隠れ給える誕生釈迦像
何時まで放課後だろう 春の夜の水田(みずた)に揺れるジャスコの灯り
紫式部の腋の臭いを思いつつ黒板消しをはたいていたり
「ぶらり途中下車の旅」をゆく旅人(タレント)の人畜無害をおもう朝なり
東進ハイスクール講師陣のキャラ濃かりけり地獄のディズニーランドのごとく
UFOのビームを眉間にでも浴びないかぎり俺の怠け癖は治らないだろう
虹の根にふれた河童の水かきが3センチほど切れてた話
三角縁神獣鏡を磨くのみ卑弥呼の家来の家来の一日
こんぺいとう散らばる庭に干されいて座敷童子のちいさな布団
夕焼けの鎌倉走る サイドミラーに映る落ち武者見ないふりして
雨ふれば人魚が駄菓子をくれた日を語りてくれしパナマ帽の祖父
いい女、されどメアドのakachan-minagoroshi@に警戒してる西麻布の夜
彫り深きモアイの視線の先にある謎の惑星が俺のふるさと
9の字に机ならべていたりけり夜の校庭はせいしゅんの底

 

帯文

感性と抒情の歌人が断念を叙述する。
この怪奇の今にこそ〝平和難民〟たる我ら、笹公人の日本の浪漫を心底に懐け。
明日の地獄絵は呻吟わぬぞ。潔白を盟う。
 大林宣彦(映画作家)